【おすすめ動画紹介】アラン・ショア博士のインタビューHow Relationships Shape Your Brain(人間関係がいかに脳を形作るか)
「右脳精神療法」「無意識の発達」の著者アラン・ショア博士のインタビュー記事を見つけました。
このインタビューを見ていただけると、博士が主張している重要なポイントをつかみやすくなると思い、勉強がてら訳してみました。(インタビュアーの話は一部カットしている箇所もあります。)参考にしていただけると嬉しいです。
Dr. Allan Schore: How Relationships Shape Your Brain
アラン・ショア博士:人間関係がいかに脳を形作るか
2024年11月11日
Timestamps
00:00:00 Dr. Allan Schore (アラン・ショア博士について)
アラン・ショア博士は、臨床精神分析家で、子ども時代のアタッチメントパターンが後の成人期の対人関係に影響を与えるかについての世界的な専門家です。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部の精神医学と行動科学の教授でもあります。
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00:05:49 Thoughts & Unconscious Mind (思考と無意識の心)
思考と行動の割合は何%でしょう。意識的な心と無意識的な心。
私は精神分析のトレーニングを受け、力動的精神療法の治療家です。神経科学者であることに加えて。最近書いていますが、右脳が無意識の心です。意識が何%、無意識が何%という尋ね方をされましたが、右脳は常に情報を処理しています。特に情動に関わる情報について意識の下のレベルで処理しています。他者と情動的な関わりをしているときに。
意識に関して、なぜそれをするのか、何をするのかと言った、基本的な動機の90〜95%は無意識によるものです。意識的な心はみずからそれを決断したと考えていますが、その下では無意識が働いています。無意識は夢の中だけだと考えていましたが、右脳は無意識のコミュニケーションを読んでいます。あなたと一緒にいて大丈夫だろうか、彼は私の言っていることを理解しているだろうか、など話の中身そのものよりも大変重要な働きをしています。
00:07:36 Right vs Left Brain, Child Development, Attachment (右脳vs左脳、子どもの発達、アタッチメント)
脳機能の局在(Lateralization)はどうなっているのでしょうか。
1980〜90年代、人間の脳の成長スパートは、妊娠第3三半期〜2、3歳であることがわかりました。これらの全ての期間において、右半球(右脳)が優位に成長します。メキシコの研究によると、生後2〜3ヶ月、6〜8ヶ月、9〜12ヶ月に右半球の成長スパートを認めています。皮質だけでなく皮質下(Subcortial)でも右脳が優位です。すなわち、アタッチメントに関わることは全て右脳で起きています。左半球は生後2年後半から3歳にかけて成長を始めます。母親は母親自身の脳を制御(regulate)し、アタッチメントのメカニズムを通して赤ちゃんの脳を形作ります。安定型、不安定型のアタッチメントも右半球で形作られていきます。思春期にも、テストステロン、エストロゲンなどのホルモンの影響を受け、脳が成長していきますが、これも右脳から始まり、次に左脳が成長します。アタッチメントは情動の制御方法を意味します。アタッチメントは母親の右脳と赤ちゃんの右脳の間で、行われる情動のコミュニケーションです。これは人生最初の2年間で起こります。母親は赤ちゃんの、表情、声、ジェスチャーを視覚、聴覚、触覚を使って読み取り、共鳴(resonate)して、制御(regulate)します。最初の2年間で作られたアタッチメントで、残りの人生も情動を制御していきます。1994年初めての著書「感情調整と自己の起源ー情動発達の神経生物学 Affect Regulation and the Origin of the Self:The Neurobiology of Emotional Development 」ボウルビィは1960年代にアタッチメントについて研究しましたが、情動の問題については取り上げられていませんでした。行動、認知に関心を向けていました。ストレンジシチュエーション法も同様です。(ここでは深く取り上げません)
00:13:19 Attachment Styles & Development, Emotions & Physiology(アタッチメントスタイルと発達、情動と生理学)
右脳、左脳の機能の優位性は、生涯続くものなのでしょうか?例えば、30歳になると左脳優位になるとといったような、年代的なものか、発達のマイルストーンに従うものかどちらでしょうか?
発達のマイルストーンによると思います。エリク・エリクソンが言うように発達は階層的になっています。皮質下から皮質に向かって発達していきます。アタッチメント関係は、その後の人間関係をどのように築いていくかををガイドしていきます。ストレスにどう対処するかも、臨界期の間に母親がどのように赤ちゃんのストレスを制御したかに影響を受けます。臨界期(critical period)は重要な用語です。右脳の臨界期は生後2年間です。ストレスに対処すると言うことは新しい状況にどう対処するかと言うことですが、それは情動(emotion)と関係しています。アタッチメントモデルは、行動(behavior)から認知(cognition)そして情動(emotion)に向かいます。1990年代アントニオ・ダマシオが脳のニューロイメージングを行いました。そこでわかったのは、アタッチメントは、心理学的(psychological)ではなく、心理生物学的(psychobiological)だと言うことです。心理学と生物学の間には切れ目が存在しますが、情動について語る際は心理学的であると同時に生理学的(physiological)な出来事であると言えます。ストレス反応における生理学、交感神経におけるエネルギーを消費する生理学、副交感神経におけるエネルギーを節約する生理学、母親は赤ちゃんのこれらについて制御を行います.(regulator)。母親は赤ちゃんの瞬間瞬間の覚醒レベル(arousal level)、情動をトラッキングし、それらと同期(synchronize)します。同期することによって制御することができるようになります。安定型のアタッチメントを持った母親は赤ちゃんにとって良い情動制御ができます。母親は赤ちゃんの否定的な情動を制御するだけでなく、左脳を使わずに右脳から降りてくる直観(intuition)を元に何をすべきかを感じ取ることができます。赤ちゃんを暗黙的に(implicitly)制御することができます。
00:18:12 Intuition, Arousal, Emotional Regulation & Attachment(直観、覚醒、情動調整とアタッチメント)
明示的(explicit)と暗黙的(implicit)について:
気づき(awareness)の下にあるのが暗黙的(implicit)です。赤ちゃんが覚醒度が下がってきた時に声のトーンをあげて興奮した状態にさせたり、赤ちゃんが交感神経が過剰に働いて制御がうまくいっていない時に、表情を穏やかにして声をソフトにすることによって下方制御(downregulate)して、静かにさせるなど、アタッチメントは情動的な覚醒(emotional arousal)の制御であり、情動的な覚醒には自律神経系が含まれます。アタッチメントの制御には、大脳辺縁系における肯定的、否定的な情動の加工と自律神経系が含まれます。それらは辺縁系ー自律神経系回路です。その回路は右脳にあります。アタッチメントのコントロールセンターは右脳にあります。母親は言葉の話せない赤ちゃんを暗黙的に(implicitly)なだめることができます。左脳は明示的な(explicit)刺激を意識的に処理します。。意識的な刺激、理性的な(rational)刺激。それはそこにはありません。意識の下のレベルにあります。私のアタッチメント理論は、相互作用的な(interactive)制御をいいます。私たち人間は2種類の制御の形を持っています。右脳にある主観的自己(左脳には客観的自己)。母親は非言語的に赤ちゃんの状態をトラッキングしています。乳幼児の脳は生後1年、2年と時間が経過するにつれて複雑になっていきます。子どもは生後2年目の最後の方には、自分の右脳で自分の情動を制御できるようになっていきます。
2種類の自己制御があります。1つは自分自身で自分を制御する自己制御(autoregulation) です。右脳の中の、扁桃体、右眼窩前頭皮質(right orbitofrontal cortex)、右脳の中で、最後に進化した最も洗練された部位です。安定したアタッチメントというのは、自分自身で制御できることを言います。人から離れて、静かなところで、自分自身、自分の扁桃体の状態を良い状態にするやり方です。もう一人は相互作用による制御です。他の人のところにいって、喜びを上方制御(upregulate)してもらったり、ネガティブな感情を下方制御(downregulate)してもらうことを言います。安定したアタッチメントではこの両方が可能です。不安定なアタッチメントではこれらは起きません。
00:23:13 Psychobiological Attunement, Repair; Insecure & Anxious Attachment(心理生物学的な同調、修復:不安定型、不安型アタッチメント)
2歳半の子どもは、回避型(avoidant)のアタッチメントでは他者を求めることなく、自己制御します。アタッチメントの鍵は心理生物的な(psychobiological) 同調(attunement)です。母親は心理的にだけでなく、生理的にも自律神経系が同調します。ステファン・ポージェスのソーシャルエンゲージメントシステムにもあるように。安定型アタッチメントの2つ目の部分は修復(repair)です。心理生物学的な同調に戻って話をします。母親は時には赤ちゃんに同期し損ないます(missatunement)。様々な理由で赤ちゃんの状態を読み間違えることがあります。程よい養育では、母親は同調し損ねた時に、赤ちゃんに再度同期し(resynchronize)、右脳と右脳を繋ぎ直します。修復が鍵になります。安定したアタッチメントは、心理生物学的な同調だけでなく、同期し損ねたのを修復できることでもあります。もし母親が修復しなかった場合、その人は、心理生物学的な同調が上手でない場合、回避的なアタッチメント、回避型パーソナリティと言います。本当の親密さは心地悪く感じます。赤ちゃんは自己制御します。
子どもと母親が同期(synchronize)しなかった場合、アタッチメントはどうなるのでしょう。
回避型アタッチメントの赤ちゃんは安定型の赤ちゃんより人を求めることが少なく、自分で自分をなだめようとします。不安型のアタッチメントでは、自分では自分をなだめられないので、人を求めていきます。メッセージを送ってすぐに返事が来ないと耐えられない人。
成人のロマンティックな関係においても、乳児ー母親関係と同じようなメカニズムなのでしょうか。それとは別個のものでしょうか。
全てのことが右脳で行われます。アタッチメント関係は2歳より前の自伝的な記憶に保持されています。後の人生でストレスがかかる状況であっても安定型か不安定型かは陽性転移か陰性転移かの鍵になっています。
00:28:33 Attachment Styles, Regulation Theory; Therapy(アタッチメントスタイル、制御理論、セラピー)
Dタイプ(diorganized 無秩序型)のアタッチメントについて
2つのタイプの秩序だった(organised)不安定型のアタッチメントがあります。一つは回避型、もう一つは不安型。無秩序型のアタッチメントの人は、ストレスがかかったときに、自己制御も相互作用による制御もできません。PTSDやボーダーラインパーソナリティ障害などでみられます。彼らが行う防衛は、アタッチメントシステムをシャットダウンすることで、それがまさに解離(dissociation)です。不安型アタッチメントの人は右脳のアタッチメントシステムが常に活性化されています。回避型アタッチメントの人はアタッチメントシステムを不活性化(deactivation)させています。安定型アタッチメントの人は、アタッチメントシステムを活性化させたり不活性化させたり、効率的に行ったり来たりさせることができます。
制御理論(regulation theory)は適切な状況で自己成長(the development of the self)させることと自己における精神病理の発生、精神障害やパーソナリティ障害の早期起源と関連しています。統合失調症やうつ病だけでなく、自己愛パーソナリティ障害、ボーダーラインパーソナリティ障害、これらは自己の修復に関わります。制御理論は、自己の成長、自己の病理の発生、自己の修復に関することです。このアタッチメントシステムはストレスの全ての期間において働きます。右脳はストレスに反応する際に優位に活動します。交感神経、副交感神経とも右脳が優位です。このシステムに不具合をきたし症状が生じるとセラピーにくることになります。
セラピーでは、母親ー赤ちゃんに右脳ー右脳の相互作用が起きるのと同じように、治療車ー患者の間で右脳ー右脳相互作用が生じます。この双方の鍵が調整(regulation)なのです。患者が調整不全の状態で訪問した時に、鍵となるのが調整です。どのタイプのセラピーであれ、鍵となるのが相互作用で生じる調整(interactive regulation)です。セラピーの後良い状態になれるには、患者と治療者との間の治療関係が鍵になります。良い治療者は、安全で信頼されるようなアタッチメント関係に戻ることができます。治療者は回避型アタッチメントの患者、安定型の患者、ボーダーラインパーソナリティの患者、統合失調症の患者とともに治療関係を作ることができるかどうかが重要なポイントです。アタッチメントの力動は初回の面談で生じます。治療者は診断を下すために患者の話す言葉を聞きます。それに加えて、治療者は患者の言葉の下にあるもの、言葉の下にあるアタッチメント関係、覚醒度、覚醒度の調節不全を治療者の身体で追跡(track)します。これは(話を聞くのとは)異なるタイプの聞き方です。治療者は左脳に耳を傾けるし、右脳にも耳を傾けます。問題はそれをどのように行うかです。それは委ねる(surrender)ことによって可能になります。私たちは意識的に目的を持って右脳につながることはできません。考えることを手放す必要があります。
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00:35:51 “Surrender,” Therapy, Patient Synchronization(”委ねること”、セラピー、患者と同期する)
”委ねること”について教えてください。治療者は患者の話を聞き、その下にある情動的な状態をトラッキングするということですね。たとえば、怒りや、絶望、ショックなど。過覚醒(hyperarousal)か低覚醒(hypoarousal)の状態など。両方のトラッキングを行い、治療者は患者をなだめるのか、なんらかのカタルシスを起こすのか、治療者はどのような介入を行うのでしょうか?
ここで勧めているのは、治療者は左脳で話を聞き、右脳で言葉の下にあるもの、右脳間のコミュニケーションを聞くことです。うつ病の患者さんは悲しげな声、調整不全の表情をしていますが、治療者はその情動的な覚醒度(emotional arousal)、低覚醒で抑うつ的であるもしくは、不安で過覚醒になっているのをトラッキングします。治療者の生理学的な状態と患者の生理学的な状態は同期します。右脳の島皮質を通して、内受容感覚的に(introceptively)患者が身体で感じることを、治療者の身体でも感じるのです。そうやって患者の内も外も理解するのです。患者の調整不全を治療者の身体で感じ取る時、おそらく患者が言語的に報告しているものと異なっていることがあるでしょう。ここで鍵となるのは、母親が赤ちゃんの、自律神経系、情動の強弱(クレッシェンドとデクレッシェンド)に同期するように、治療者は患者に同期します。すると、患者の覚醒度を下げたい時には、暗黙的に声のトーンをゆっくりにするし、覚醒度を上げたい時には、声のトーンを上げて、相互作用での調整が行われるようにします。治療者と患者はともに調整不全の状態から調整された状態に戻って行きます。治療者は言語的にも身体的にも患者に対して、自己調整や協働調整がどのようなものか示すことができます。患者は治療者の表情を見、声を聞き、ジェスチャーを見て、3つの感覚モダリティが患者と治療者の間を行き来します。初回の診察では、診断を下すだけでなく、患者に同期し、患者と治療同盟を結ぶことが鍵になります。初回診察の最後で患者が、”どうしてか分からないけれど、気分が良くなりました。私の感じていることを理解してくれたように感じます。それは私が言葉で感じている以上のものです。”と言うかもしれません。
00:39:46 Synchrony, Empathy, Therapy & Developing Autoregulation(同期、共感、治療と自己調整の発達)
成人のロマンティックな関係によって、子ども時代のアタッチメントの失敗を癒すことができるのでしょうか。それから、「私たちは自分自身の親になる必要がある」という言い方を通俗心理学(pop psychology)やSNSの中でされることがありますが、それは自分を自分でなだめるということでしょうか。治療者はどの程度、自己調整、相互作用による調整の回路を組み替えることができるでしょうか。
直近の5年間で大量の対人同期にまつわる情報が出てきました。シンクロニー(Sychrony)はギリシア語のsync (同じの意)、chrony(at the same time 同じ時期)からなっています。2人の人が同時にいて同じことを感じることをいいます。私たちは間にある同じものを自発的に感じます。鍵は自己調整でなく、協働調整です。ふたつめはこれが暗黙的に(implicitly)生じるということです。母親が赤ちゃんの様子を感じ取るのにこれを無意識で直観的にやっています。右脳は直観的で、写象主義的(imagistic)なのです。理性的でも論理的でもありません。特定の状態の制御ができない障害、例えば激怒の制御、喪失感の制御、恥の調整不全などです。指摘しておきたいのは、これらの情動の制御はどれも暗黙的(implicitly)、意識下で行われるということです。忍耐力を持って患者とともにその場にい続けるということが重要になります。患者に変化を起こすのは、治療者に患者に伝えたり、したりすることではなくて、いかに患者とともにいるかなのです。患者が調整不全の状態でいた時に、明示的で知的な症状への理解、生理的、心理生物学的なレベルでの暗黙的で意識下の理解がありますが、同期(synchrony)が共感(empathy)のメカニズムの土台にあります。共感は文字通り、その場にいる必要があります。共感は右脳の機能です。「情動的共感(emotional empathy):あなたが感じていることを私も感じている」私たちは同じ感情を分かち合っているのです。それについて考える必要がなく、それとともにいると知っている状態です。右脳で情動的共感(emotinal empathy)を行い、左脳で認知的共感(cognitive empathy)を行います。認知的共感は理解(understanding)ですが、それは何も変化をもたらしません。右脳にある眼窩前頭皮質(orbital frontal cortex)と左脳にある背外側前頭皮質(dorsal lateral cortex)が制御の上で特別重要な部位になります。眼窩前頭皮質が新たに帯状回、島皮質、扁桃体との接続を始めると、あなた自身は変化が始まったと感じます。その変化は調整(regulation)によるものです。その人がより調整された状態になり始めると、それには同期が鍵になっており、患者との間で強い治療同盟ができるのです。そこで、強い同期が起きれば起きるほど、協働調整が起きます。最初は患者ー治療者間で生じた同期が、今度は他の人、例えば妻、パートナーとの関係においても生じるようになります。究極的には症状が変化します。覚えているかと思いますが、症状は調整不全によって生じるからです。ですので、全ての鍵は”調整”です。
00:45:07 Mother vs Father, Child Development; Single Caretakers(母親vs父親 子どもの発達、単身の養育者)
母親ー赤ちゃんのアタッチメントと父親ー赤ちゃんのアタッチメント。母親が育てられず、里親や拡大家族に育てられる場合どのような影響があるのでしょう。
色々な議論はありますが、主要なアタッチメント対象(primary attachment figure)は存在すると考えています。主要なアタッチメント対象は、赤ちゃんが0歳から2歳の間ストレス下に置かれた時に協働調整を行います。別の言い方をすると、主要なアタッチメント対象は赤ちゃんの右脳が調整不全になっている時に、赤ちゃんのために右脳を提供する人物です。父親も母親も主要なアタッチメント対象になる可能性があります。しかし、女性の方が非言語的なーキューを読み取るのが上手いですが、父親もそれになり得ます。私たちの研究では男性も右脳を持っているということがわかってきました。(ジョーク)多くの文化で生後2年のうちに右脳を提供するのは女性です。家庭に男性がいて世話をするとか、ともに子育てする中で男性が主要なアタッチメント対象者になることはあります。しかし、生後2年目の最後の方に父親の出番が起きます。父親も主要なアタッチメント対象ですが、関わり方は、母親のそれとは異なり、子どもの覚醒度を上げるような関わりになります。
遊びによって、交感神経が活性化されるのですね。
上方に調整して、覚醒度が高い状況に慣れるようになります。生後2年目に入り、父親が子どもと例えば、乱暴な遊び(rough and tumble play)をすることで、いかにリスクを引き受けるかを教えます。また父親は、自律的、自主的に動くことを教えます。母親が生後1年で協働調整で右脳を形作り、父親が生後1年目の最後の方から、2年目、3年目にかけて左脳を形作ります。
近年家族の形が変わり、スカンジナビア諸国は、離婚が多く、単身で子どもを育てることもありますが、その場合はどうなりますか。
それは理解しています。その場合、生後1年で母親の右脳を、その次の1年で、父親、他の家族がいなければ、母親の左脳が使われることになります。お分かりのように、右脳と左脳では機能が異なります。
00:50:51 MDMA, Right Brain; Fetal Development(MDMA、右脳、胎児の発達)
現在はFDAによって承認されていないMDMAを使った心理療法で、興味深い結果が出ました。そういった化合物を服用すると、右脳ー右脳の同期が促進されます。それを行うには倫理的な問題が生じますが。
最終的に鍵となるのは人間関係です。エンパソージェン(empathogen:共感を生むような多幸感をもたらす向精神薬)は、右脳がどのように働くか、皮質下でアタッチメントシステムが働いているのを知っている人には有効に働くでしょう。私たちは皮質に意識をむけすぎています。皮質下は全ての土台になっています。私のところに来る人には右脳精神療法を行っていますが、それで起きる変化を見て興味深い可能性を感じています。
右脳は左脳を単純にしたものだと言う人もいますが、右脳と左脳は全く異なる働きをしています。右脳の発達のスパートが第3三半期だと言いましたが、この5〜10年、私は子宮内での発達に関心を持ってきました。科学的な研究成果が出ています。脳の左右の局在や、子宮内での記憶は右の扁桃体に貯蔵されていることがわかりました。子宮内で起きていることに関心を向けると、出生時には、右脳の深い部分、右扁桃体、島皮質が機能しており、胎盤を通して、母親の自律神経系の同期が起きています。
アドレナリンが胎盤を通過するのですか?アドレナリンはBBB(脳血流関門)を通過しないのは知っていますが、胎盤は通過するのですか?
大部分がコルチゾールです。扁桃体が発達する臨界期において、コルチゾール値が高いことは扁桃体の発達にとって適当ではありません。コルチゾール値が高いということは身体の中でストレス反応が起き続けているということになります。もし母親が妊娠中強いストレスの元におかれると、胎児の脳の深いところに影響が生じます。確かではありませんが、ホルモンは神経修飾物質(neuromodulator)に変化をもたらすだけでなく、神経可塑性に関わる神経修飾物質(ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン)の調整にも影響を与えます。
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00:57:46 Integrating Positive & Negative Emotions, Quiet vs Excited Love(ポジティブな&ネガティブな情動を統合すること、静かな愛vs興奮した愛)
著書の「右脳精神療法」には、母親と赤ちゃんの興奮した状態から穏やかな状態への協働調整に関する美しい描写がありました。赤ちゃんが過覚醒の時に、母親がシーという音やハミングや子守唄、プロソディ(prosody)によって赤ちゃんをなだめます。セロトニンやオキシトシンが関与しています。また母親は、目を見開いて、大きなジェスチャーをして話しかけることで赤ちゃんの覚醒度を高めることもできます。これはノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンが関係しています。大人の人間関係を作る際も同じようなことがいえますか。母親ー赤ちゃんの関係はすべての人間関係の基礎となっているのでしょうか。
その通りです。ここで鍵になるのはまた情動調整(emotion regulation)です。私の考えにおける中心的な信条は、まずネガティブな情動の下方制御(down regulation)です。安定型のアタッチメントを覚えていますか。赤ちゃんにストレスがかかっているときに、母親はネガティブな状態を下方制御します。アタッチメントは、ネガティブな状態を下方制御し、ポジティブな状態を上方制御するのです。人間におけるポジティブな状態は、喜び、熱狂、興奮です。ホルモンとしては、ドーパミンなどが挙げられます。治療でも同じように、ネガティブな状態を下方制御するだけでなく、ポジティブな状態を上方制御することも分かち合われます。それはとても重大な(critiacal)部分です。「右脳精神療法」には2種類の愛があると書きました。静かな愛と興奮した愛。小児科医でもあった、20世紀の著名な精神分析家のドナルド・ウィニコットが静かな愛と言っています。それはアドレナリンの下方制御ですし、交感神経系から副交感神経優位の状態にするのが静かな愛です。一方、興奮した愛、情熱的な愛は、覚醒度を高めます。それらはともに重要です。究極的には両方が統合される必要があります。私たちは適応的な理由によってネガティブな情動を持つことがあります。例えば恥(Shame)は、とても高い覚醒度を下げます。それができない場合は、自己愛パーソナリティになります。私たちはポジティブとネガティブな情動を感じなければなりません。鍵となるのが安定したアタッチメントです。安定したアタッチメントはポジティブな情動とネガティブな情動を統合することができます。安定型のアタッチメントをもった母親は、赤ちゃんの覚醒度が下がればそれに合わせて下げ、上がればそれに合わせて上げることができます。
話は飛びますが、自己愛パーソナリティ障害には2つのパターンがあります。脆弱なアタッチメント(valnerable attachment)と利己的なアタッチメント(egotistical attachment)です。脆弱なアタッチメントは不安型です。ポジティブとネガティブを統合できなかった場合、スプリッティングが生じます。
01:03:33 Splitting, Borderline; Therapy & Emotions(スプリッティング、ボーダーライン、治療&情動)
それはボーダーラインパーソナリティ障害でみられる状態ですね。
スプリッティングは外に向かっていきます。「あの人がすべて悪くて、わたしはすべて良い」相手の良さを見出すことができません。内的なスプリッティングは、「良い自己」と「悪い自己」を統合できず、良い自己は愛するけれど悪い自己のことは憎みます。治療者のポジティブな資質を過剰に理想化します。なんらかのストレスが生じたり、同調不全から裂け目が生じると、すべて良いとされていたことが突然すべて悪いものになります。強固な治療同盟ができていない場合はドロップアウトが生じます。
ボーダーラインパーソナリティを持つ人は、どの人にも治療者に関わるように関わるのでしょうか。
私は、世界の見方だと思っています。世界の見方が右脳と左脳で大きく異なります。自己愛パーソナリティの場合、赤ちゃんはすべて良い(all good)で、母親もそれにたいしてとても肯定的です。赤ちゃんがうつに陥るとそこで協働調整が止まってしまいます。母親が同期するのをやめてしまうのですか。すべては無意識に行われます。もし、母親と赤ちゃんのあいだで同調不全が生じた時に、回避型のアタッチメントの場合、「私は関わらない」と引いてしまいます。赤ちゃんは次に母親は何をするだろうかと予測しています。回避型の場合は引いて、とても抽象的になります。その時点では「私はあなたのことが感じられない」「あなたの言っていることが理解できない」となります。距離が近くなるたびに遠ざかることが繰り返されます。不安型の人の場合、距離が近くなると、あれをやってほしいこれをやってほしいと要求します。回避型の場合は声のトーンが平坦になります。私たちはいつも自分の生理的な状態から、情動的に近いか遠いかを感じます。これはすべて沈黙的(implicitly)に生じます。食べてないからたくさん食べようと意識のレベルでいうのとは異なります。もしパーソナリティを変化させたいと思うのであれば、右脳の状態を変える必要があります。なぜなら、全ての治療は情動を見ていくからです。どんな治療であれ、治療関係とそこにある情動が重要になります。
01:09:24 Tool: Right Brain, Vulnerability & Repair(道具:右脳、脆弱性&修復)
それではどうすれば右脳を活用することができるでしょうか。右脳の健康が損なわれている場合、右脳の神経回路をどのように修復できるでしょうか。それは治療者なしでひとりでできることなのでしょうか。
それは無理です。私たちはともに成長していきます。ここで鍵となるのは、対人神経生物学(interpersonal neurobiology)です。インターパーソナルとは2人の人間の間で起きることです。自己調整が強調されていて協働調整のことはあまり強調されていません。右脳を変えるために重要なのは、近くにいることができる人を見つけることです。あなたがオープンになれる人を探すことです。あなたが傷つきやすい状態でいることができる人を見つけることです。それは文字通りあなた自身の欠点を見せることです。その人たちを右脳同士のコミュニケーションをすることです。相互作用的な調整が神経回路を作ったり、精緻化させます。ここで問題になるのは、取り入れる(taking in)ことですここで大切な用語についてお話ししましょう。精神の健康と身体の健康のために大切なのは右脳です。治療では、情動が高まる瞬間(hightened affective moments)が生じます。治療家は患者と治療同盟を結びます。治療同盟がしっかりできているほど、共感できるし、より分かち合うことができます。そのとき私はいくつかの防衛を手放し始めることができます。防衛は、ネガティブな情動をブロックします。患者は外の世界から治療家の部屋に入ってくる時に左脳を使っています。セッションの途中で、より情動的に語り始めるようになります。記憶や悲しい状況、カップルの間で生じた出来事など。声のトーンが変わってきます。このような瞬間は、50〜60秒で、この高まった瞬間に、患者と治療家の右脳は同期し始めます。ここが変化する可能性がある瞬間です。人とともにいて何かを作り出す際、情動的に高まった瞬間を私たちはともに分かち合います。それは、自分をオープンにするリスクを伴って生じます。そのときに私たちは自伝的な記憶に入っていくことができます。この人とこんなことがあった、そのコンテクストまで理解できた、それは右脳がイメージとともに働くからです。イメージを思い出すことができ、そのとき感じていた親密さを思い出すことができます。これらはすべて右脳に注ぎ込まれます。私たちは自伝的な記憶、情動的に高まった瞬間を右脳に注ぎ込んでいます。このときに右脳に変化が生じうるのです。これが知的なものより重要だと言いたいのです。すこし異なる視点から話します。私が提案しているのはこのような右脳同士のコミュニケーションです。右脳同士のコミュニケーションはいつでも行われていますが、それが上手な人とそうでもない人がいます。人の表情や声のトーンを読み解けない人がいます。そういう人は同期も難しいです。
01:15:32 Right vs. Left Brain, Attention(右脳 vs 左脳、注意)
注意深く話を聞くにあたり、右脳と左脳が競合することはないのでしょうか。話を聞いている時に、話の内容を聞くだけでなく、ほんのわずかな間ふっと力を抜いて、リラックスしてそこにいると、話の方向性が変わっていくことがあるのですが。
それはとても大きなシフトです。左脳から右脳へのシフトは100ミリ秒(0.1秒)で生じます。それで行き来しています。
そういうことですか。普段は法廷にいるときのように、右脳が抑えられているということですね。それで合っていますか。
そうです。そうです。右脳は注意力(attention)において優位です。赤ちゃんー母親の関係で、母親は赤ちゃんの表情や声のトーンに注意を向けます。神経科学では、注意には2種類あると言われています。左脳は強くて狭い範囲の集中を司ります。狭い範囲の集中とは、例えば、私の話す言葉のひとつひとつを理解することです。もうひとつのタイプの注意は、右脳が司り、広範囲にわたる注意(wide ranging attention)です。それはかつてフロイトが平等に漂う注意(evenly suspended attention)として述べていたものです。そのような形態の注意を右脳がになっているのです。注意というのは、外側から何がくるだろうかという注意だけでなく、自分自身の中で何が起きているかという注意も含まれます。自分の身体の生理的な状態が変わります。そうです、2種類の注意があって、いつでも狭い注意しか示せない人は左脳で生きている人です。
超線形(hyperlinear)な人ですね。
そうです。論理的すぎるし、合理的すぎて、大きな全体像を見ることができません。そういう人は物事の狭い範囲しか見られないので、より広いコンテクストを見ることができません。コンテクストというものは、あなたと私がいる時に必ず存在します。コンテクストは安全と信頼の感覚をもたらします。左脳から右脳にシフトしたときに情動的な雰囲気が変わります。
01:19:26 Right Brain Synchronization, Eye Connection, Empathy(右脳の同期、視線を合わせる、共感)
これまで脳を理解するには、脳の内側で生じている回路について調べなければならないと考えられていました。しかし対人関係に関わる部分もあるわけです。単独の心理学ではなく、2人の間の対人心理学が存在します。母親がいて赤ちゃんがいます。患者がいて治療者がそこにいます。ともにいる間ずっと交わされる言葉の下で、右脳ー右脳間コミュニケーションが常に行き来しています。ハイパースキャニング脳機能イメージングではパラダイムシフトが起きています。2人の脳は相互作用を始めることがわかってきました。特に情動的な状態になり、互いに視線を合わせた時に、いかに相手に共感的に共にいられるかに文字通り集中するようになります。一人の右脳がもう一人の右脳に同期し始めます。とくに右の頭頂側頭接合部(right temporal parietal junction)が同期します。右の頭頂側頭接合部に関するさまざまなエビデンスが出ています。 情動は相手の右脳との同期をスタートさせます。直接的なアイコンタクトはとても強力なコミュニケーションのツールです。眼は自律神経系に支配されています。アイコンタクトで自律神経系の同期が起こります。表情、声、ジェスチャー。表情を認識するのは、右脳の後ろの方で起こります。声も右脳の後ろの方で処理されます。声のメロディー、トーン、語用(semantics)ではなく、プロソディ(prosody)です。右脳の後ろの方では、ジェスチャーも触覚も処理します。これらはすべて右頭頂側頭結合部で統合されます。2人の人が共感的に同期した場合、患者は気づきます。「ああ、それは激怒だ。」「それは怒りだった」それに共感的に同期した治療者は、右頭頂側頭結合部でコミュニケーションを送り、受け取ります。それで右脳同士でコミュニケーションをとります。心理療法のプロセスの中で発見するのは、人間関係、情動に関する問題で部屋に入ってきた患者と、顔を合わせて、目を合わせて、お互いの状態をトラッキングすると、右頭頂側頭接合部同士で同期が起きます。関係性における無意識下のコミュニケーションは右脳で起きるということです。それはコンテクストの中で起きます。精神分析における新しい変化は、無意識は夢の中でのことだけでなく、関係性における無意識があり、無意識下のコミュニケーションは右脳で起きるということです。それはコンテクストの中で起きます。心理療法の分野でも大きな変化が起きています。心理療法のメカニズムは、認知的な内側ではないのです。情動にいろどられた会話を他者と持つことです。他者と情緒的な繋がりを持つことです。治療関係は変化を起こす要素になります。昔は、患者の無意識がそこにあったら、治療者はそれを解釈する役割だったのが、左脳で解釈しつつ、右脳も使っていくようになりました。患者をカウチ椅子に座らせるのではなくて、互いに顔を合わせ、目を合わせます。
01:25:39 Music & Dogs, Resonance(音楽&犬、共鳴)
音楽について、音楽を聞いていると、真実を見つけたという感じがすることがあります。詞を読んでも響かないのですが、歌として聞くと心が動くことがあります。犬もそうです。ペットは人間と近しい関係を作ります。母親ー赤ちゃんの関係とまではいかなくても、お互いに見つめ会うことで強い絆を感じます。これらも同じように考えて良いでしょうか。
右頭頂側頭接合部も、右眼窩前頭皮質も右脳にあります。右眼窩前頭皮質は制御に関与し、右頭頂側頭接合部はコミュニケーションに関与します。鍵となるのは、情動のコミュニケーションであり、情動の調整です。
委ねるスイッチ(surrender switch)はどこにあるのですか?
左脳から右脳に移る大きなスイッチです。
言葉の内容に注意を向けるのではなく、その言葉がどのように聞こえるか、どのように感じられるかに意識を向けるのですね。
そうです。神経科学は音楽に関する研究をしており、大抵の場合右脳が活性化されます。自分にとっての音楽、主観的な好みが影響します。情動調整のメカニズムに不可欠なものです。ペットも同じく情動調整を行います。私は犬を4匹飼っていますが、そのコミュニケーションは文字通り触覚的(tactile)で、犬に触り、声のプロソディーの変化によって行われます。犬は声のプロソディーを理解し、いくらかは人間の表情も理解しています。そして匂いです。人間でも近しい関係では匂いが鍵になります。性的な覚醒のときなどに。犬は嗅覚がとても強いのです。アタッチメントが分離の後の再会だとするならば、家に帰ってきて犬を抱っこすると、下方制御が行われます。左脳モード、ストレスはどこかに飛んでいき、右脳が働くモードに変わります。音楽も同じようなところがあります。音楽を聞くと自己調整が起きます。ライブで聞く音楽だとなおさらです。
一緒に演奏する場合はどうですか。
演奏者と聴衆が同期するという研究結果が出ています。何千人もの人が同じ状態に同期するのです。
01:30:58 Right Brain & Body; Empathic Connection, Body Language(右脳&身体:共感的なつながり、ボディーランゲージ)
スティーブン・ポージェス(Stephen Porges)がいうように、脳と身体は両方向性につながっています。右脳は副交感神経と交感神経と左脳より優位に繋がっているなどということはあるのでしょうか。
右脳は左脳よりも身体と繋がっています。イアン・マクギリスト(Iain Mcgilchrist:イギリスの精神科医)という人を知っていますか。彼とは対話を継続してきました。イアンは右脳は身体により繋がっていると言っています。無意識的な意志は、意識的な意志より優位であり、より重要なのです。
このインタビューの最初の方で左か右かについて話しましたが。左脳から右脳へのシフトにどのように気づいていくか。言葉の内容への注意を少し下げるとか、会話がどのように感じられるかなど。近年、姿勢はその人の状態を示していると言われています。たとえば腕を組んでいるとき心を閉ざしているなど。私は寒いと感じる時に腕を組んだり、調和しているときにも腕を組んだりしているように思いますが。
エマニュエル・ハマー(Emanuel Hammer:アメリカの心理学者) が情動にどのようにリーチするかについて話していたことがあります。セッションの最中、私が前のめり(lean forward)になるのではなく、背もたれによりかかる(lean back)姿勢をとって、来るものを受け止めようとするとき
素晴らしい。SNSでは前のめりになるとそれに関わっていて、後ろに引くと関わらないいったような(画一的な)物の見方を‥
治療者は情緒的で共感的な関わりをとろうとしてこの姿勢をとるのです。この姿勢をとると、以前は見えなかったものや聞こえなかったものが聞こえるようになります。このような情緒的な関わりを持つときに、なにかしらのイメージが湧きあがります。他の人が持っている情動的な体験を表すイメージです。あなたは相手のイメージを描き、相手はあなたという人のイメージを描きます。ハマーが言うには、ここで私たちは2人の間に情動無線(affective wireless)ができます。それは自分と相手を行ったり来たりする、右脳ー右脳コミュニケーションのようなものです。かつてフロイトは人間の無意識は受容器(receptor)のように働き、他の人の無意識とコミュニケーションをとると言っていました。人間は相手の無意識に、意識を通過させることなく、出会うことができるとも言っていました。そういう意味でいうと納得ですね。
もうひとつ言いたいこととしては、考え抜かれた行動ではなくて、自発的な行動が鍵になります。お互いに自発的な行動を表すことは同期が起きるために必要です。双方向、順番を交代させるコミュニケーションです。母親ー赤ちゃんのアタッチメントに戻ります。赤ちゃんが泣いたら、母親が反応します。今度は順番が変わります。良い関係の時には、順番がスムーズに入れ替わります。順番がスムーズ入れ替わるコミュニケーションができるまで、私たちがお互いに出会ったとは言えないのです。
01:36:47 Tool: Text Message, Communication, Relationships(道具:テキストメッセージ、コミュニケーション、人間関係)
近年テキストメッセージが主要なコミュニケーションのツールになっています。情動に関する専門家、例えばリサ・フェルドマン・バレットをここにお呼びしたこともあります。スマイル笑顔や泣いている顔など、頭がふっとぶなど、情動を絵文字化する(emojify)のは正確さには欠けますがとても便利です。絵文字は今日話していたことの多くが欠けています。緑のバブルー青のバブル、見るー見られる、読むー読まれるのタイミングは設定によって変わります。順番を交代するまでの反応時間の間に、別の話題が出てきたり、自分の注文したメニューが届いたり。。こう言った状態に人間は反応できますが、人間関係を構築したり強化するのにこの状況は良い(もしくはニュートラル)でしょうか悪いでしょうか。私は49歳になりますが、若い脳にとって良い影響を与えないのではないでしょうか。
同意します。まずイアンの考えを話したいと思います。今日、右脳よりも左脳の方がずっと優位になっています。これは我が国だけではありません。彼はそれをとても問題視しています。彼の著書「The master and his emmisary The divided brain and the Making of the Western World(主人とその使者たち:分裂した脳と西洋世界の成り立ち)」のなかで、左脳が主人を裏切ることが私たちが今抱えている問題の一部であると述べています。
テキストメッセージが主なコミュニケーションのツールになっている世代について。ジョナサン・ヘイト(Jonathan Haigt)の著書「The Anxious Generation:How the Great Rewiring of Childhood Is Causing an Epidemic of Mental Illness(不安を抱える世代:幼少期の大規模な再配線がいかに精神疾患のまん延を引き起こしているか)」では、子どもはスマホを手放し、それを励ます大人たちと関わりを持ち自由にふるまわせるように勧めています。オンラインの世界と物理的な世界、幼い脳にとってよりよいコミュニケーションをもつにはどうしたらいいでしょうか。コミュニケーションにおける有効性の階層構造(hirarchy of effectiveness)、たとえば、テキストが最下層で、ボイスメモがその上などあるのでしょうか。手書きの手紙には大きな意味があります。リアルタイムの交流ではありませんが。タイプライターも今では意義あることかもしれません。
手紙に関しては、手紙を書こうとすることは繋がりを作ることです。私自身も子供の頃キャンパーに手紙を書きました。自分自身を振り返って、自分がどのように感じたのかそれを言葉で分かち合うことはとても対人交流的です。ここで指摘しておきたいことはあるタイプのパーソナリティの人には文章を書くことがとても合っています。左脳に住んでいる人たちです。
右脳を育てるのに良いのは、世界に出て、旅をし、自然の中に行くことです。そこで人と関わる体験も良いでしょう。
01:42:18 Right Brain Dominance & Activities; Tool: Fostering the Right Brain(右脳優位&活動;道具:右脳を育む)
右脳優位の活動であると判明したもののリストを作りましたので、それをシェアします。
もっとも高いレベルの人間性は右脳に存在しています。
直観(Intuition)直観はあらゆる種類の職業で見られます。消防士がいかに火事を消すかなど。直観は身体感覚を利用しています。
イマージェリー(心象)(Imagery)
創造性(Creativity)何か新しいものを作り出す
メタファー(Metaphors)
想像力(Imagination)
ユーモア(Humor)
音楽(Music)
詩(Poetry)
芸術(Art)
道徳(Morality)
コンパッション(Compassion)
霊性(Spirituality)
愛(Love)
素晴らしいリストですね。右脳を育てるためにどのようなことをすればよいでしょうか。自然の中で過ごすと言われましたが。歩くことなどは。先に教えてくださった広範囲にまたがる注意(wide range attention)、平等に漂う注意(evenly suspended attention)は、自然の中にいると視野が広がるのではないでしょうか。次のセッションまでにどんなことをしてみるように提案しますか。
ここで話したいのは2点。治療において、技法が強調されています。右脳に関する研究が示しているのは、治療は技法以上に右脳のプロセスが重要だということです。私が行っているトレーニングでは、良い変化が生じます。治療終結後も良い状態を保つことができています。認知行動療法(CBT)といった他の治療法よりも良い結果が出ています。
もうひとつは、右脳は、新しい情報を加工することに秀でています。何か新しいものに出会った時に、右脳は素早くそれを見つけ、ノルアドレナリンのバーストを起こします。好奇心をもって追求することと心を開きます。新しいものは新しい挑戦をもたらします。好奇心が重要です。アルバート・アインシュタインも新しい人々、新しい挑戦とともに新しい体験をと言っています。旅することもその一つです。私は治療家になって45年、最近本を書きました。それは新しい人間関係や友人をもたらしました。それからエクササイズが重要です。エネルギーとミトコンドリアに関心を持つようになりました。ナヴィオー(Robert Naviaux:サンディエゴのミトコンドリア病を研究する科学者)が言うように、 治療のプロセスは文字通りエクササイズです。精神的、身体的な健康と身体を回復させる睡眠、身体をケアすることです。人生の初めの方でいかに身体をケアするかを学びます。自分の内面を見て振り返って、見たいもの見たくないものがあるでしょうが。
01:50:10 Defenses, Blind Spots(防衛、盲点)
ここで防衛についてリファレンスを示しておきたいと思います。なぜなら防衛は適応的であることもあれば、非適応的であることもあるからです。そして防衛はとても重要なものです。私たちは圧倒された時に防衛を使います。解離(dissociation)は防衛です。抑圧(reppresion)という形の防衛もあります。適応的であり、非適応的でもあります。非適応的な抑圧の場合、左脳は右脳からやってくるあらゆるものをシャットダウンします。私たちには自分では見ることができないある部分があります。それを見ることができるのは他の誰かがそれについてフィードバックをくれる時です。それを自分の中で見ることができるようになります。それがたとえ不快だったとしても、信頼できる誰かからのフィードバックをもらう必要があります。このちからが自身の心理を変えるために必要だからです。人間の心理を変えるにはとても大きな問題が生じます。右脳を変えるために私たちが試みるには、近しい関係が必要です。すべての人に盲点が存在します。そこから脱するには、否定的なフィードバックを信頼して受け取る必要があります。それを聞いて失望が襲ったとしましょう。人生の早期で情動について学びました。それらが来るのにまかせて、去るのにまかせるのです。情動の強さをそのまま感じます。それが入り込んできて、また別の形を作るのです。私たちの情動は適応的です。ここで指摘しておきたいのは、わたしたちが信じている誤謬(fallacies)のひとつに、否定的な情動は悪くて、肯定的な感情は良い、というのがあります。私たちはすべての情動と繋がっています。なぜならすべての情動には適応的な価値(adaptive values)があるからです。私たちはすべての情動と親しくなる必要があります。
01:53:14 Creativity, Accessing the Right Brain, Insight(創造性、右脳にアクセスすること、洞察)
私には作詞家の友人がいるのですが、歌を書く時に、絵を描くことから始めるそうです。彼は絵も売っていますが、それは本業ではありません。絵を描くことは、歌を書くためにギアにグリスを塗るようなものだと言っていました。シンガーソングライターのジョニー・ミッチェル(Joni Mitchell)もそれと同じようなことをしていると知りました。右脳の回路を開くのに、このようなツールや技法は意味がありますか。
はい。創造性は何か新しいものを加工することでしたね。同じものを見るにも違った見方をするのです。アーティストはどのように委ねたら、左脳から右脳に入れるかを知っていますね。もう少し自伝的なものをお話ししましょう。何かを書くとなった時に、10年間自分で研究しました。図書館に行き、山積みの本、心理学、神経学、化学を読みました。あるときティーンエイジャーの時にやっていたピアノをやり始めたのです。論理的で合理的に理解していたものを指で理解したいと思いました。また視覚化もできるようになりたいと思いました。細胞の中のミトコンドリアを視覚化するのは音楽の能力と同様に直観的に右脳の活動を高めました。
素晴らしいですね。図書館で山積みの本の中にいたときは左脳の認知的な努力をされていましたね。そこでピアノが弾きたいと思い立ち、10年間に及ぶ単身での研究をされたのですね。ピアノが弾きたいというのはひらめきだったんですか。ピアノを弾くことと、山積みの本に向き合うことはとても対照的なことですから。
それらはわたしにとってどちらも探求なのです。もう一つの例をあげましょう。「アハ体験」です。それも右脳です。突然洞察が下りてくるタイミングがあるのです。今まで誰もいなかったのに突然ミューズが降りてくるような体験がアハ体験です。それから、研究していた10年間の間は、どんなことも記憶しようとしないことにしました。自分が理解したいように理解しようとする努力はどこにも行き先がありません。記憶するためにはたくさんの時間を浪費しなければなりません。もし私に良い記憶力があれば、どこに何がしまってあるか即座に言うことができるでしょう。私はそのとき読んだり書いたりせず、コピーを取りました。そうやって学び方を学んでいたのです。
どのようにノートを取っているのか尋ねようとしたのですが。
いえ、その代わりにどのように学んでいるのか、どのように情報を吸収しているのかといった内省(introspection)の過程がありました。深く入っていくにはどうしたらよいか。左脳は表面的で、右脳には深みがあるのです。例えば、自伝的記憶において、とても重要な情動的な体験があったとします。それはただの記憶よりも深いものです。
01:59:31 Paternal Leave, Parent-Child Relationships, Attachment(父親の育児休業、親子関係、アタッチメント)
右脳の回路はとても重要です。母親(主要な養育者)と赤ちゃんが同期すること。その段階で必要なことは何ですか。子どもと多くの時間を過ごすことでしょうか。近年、しばしば両親が働きに出ていたり、乳母がいたり、状況が変わってきています。家族と仕事のバランスをとることなど、家族関係を最適化、いや最大化するにはどうしたらよいでしょう。
私は他の文化に比べて、家族で過ごす時間が多いとは思いません。人々は強いストレスを感じています。他国の母親の育児休暇、父親の育児休業についてお話ししましょう。スカンジナビア諸国では父親の育児休業は3ヶ月、母親の育児休業は6ヶ月またはそれ以上です。この時期は人生において極めて重要です。もし赤ちゃんが道徳感のあるパーソナリティを形作るのに影響を与えたいのであれば、最初の時期がとても重要です。これらの休業がない人は、生後6〜8週間で仕事に戻ります。生後6週間は右脳の臨界期の始まりです。自律神経系の臨界期も6〜8週間、扁桃体基底外側核(basolateral amygdara)、島皮質、帯状回も臨界期を迎えます。アタッチメントが形成される前に分離がおこなわれると問題が起きます。このことについては数多くの議論があります。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究で、成人の人生における満足度に関して、子ども時代の何が最も優れた予測因子になるかというと情動で、次に子どもの行い(child’s conduct)、そして三番目が子どものIQです。これは物事を逆さまに見ています。私たちは3歳にはいってから回路が繋がる実行機能(excecutive function)を重視しすぎです。パーソナリティの土台になるのは、子宮内から生後2、3年です。だからこそそこにお金を注ぐべきです。2021年のユニセフの調査では、36カ国の経済的豊かな国の中で、子どもの情緒の健康性(emotional well-being)は最下位でした。それは恥ずべきことです。
この問題に光を当ててくださってありがとうございます。多くの人がこれを見て考えるでしょう。
IQが最後で、最も大事なのは情動、そして子どもの行動です。子どもをコンピューターのように扱うことは間違っていると分かるでしょう。わたしたちはただ知識を伝えるのではなく、情動を伝えたいと思います。
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