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Alsの共作用理論1ー赤ちゃんのストレス反応

[2024.01.23]

脳の発達について本を読んでいるのですが、ちっとも頭に入りません(涙)

精神科医として仕事をするのに必要なレベルまでは理解できるようになりたいと、あれこれ探してみたところ、共作用理論(synactive theory)を見つけました。

​​​​まずは基本的なところを整理するのに役に立ちましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

synactive theory とは、児の発達は固有のサブシステム(自律神経系、運動系、状態調整系、注意・相互作用系、自己調整系)の分化と調整、統合によって進み、そのプロセスは常にその時々の環境との共作用によって生じるという考え方である。

まず、赤ちゃんの発達には、中心となる呼吸循環機能や栄養状態などの内臓機能をつかさどる自律神経系がしっかりと働いてくる。そして、自律神経系の安定したうえで姿勢を保持したり、手足を動かしたり、吸啜したりといった運動系がしっかりと発達してくる。そして、運動系がうまく調節できるようになると、睡眠覚醒状態などの状態調整系が働いて落ち着いた状態を維持しようとすることができる。落ち着いた状態を維持できるようになって、はじめて眼を開いて周りを見つめたり、環境に注意を向け始める注意相互作用系が働くようになる。まずこのように、それぞれのサブシステムが、環境とともに働き、発達していくという考え方である(藤本,159 ,2018)

 

まとめると、

 

1.自律神経系

2.運動系

3.状態調整系

4.注意相互作用系

5.自己調整系

 

の順に機能が獲得され、他のシステムと関連しながら、成熟していくということになります。

                                                                                    2) のFigure1 より

 

この理論と元にして作られた早産児行動評価(APIB)はNICU(新生児集中治療室)で活用されていますが、元の論文には、早産児のみならず、その他の高リスクの乳児や、満期産の乳児にも適していると書かれていました。

 

私が興味深いと思った点は、その論文に強いストレスがかかった時に各システムが呈する反応が書かれていたところです。それらをかいつまんでご紹介すると、

 

1.自律神経系のストレスサイン

   ・皮膚の色の変化(蒼白になる、チアノーゼ(青っぽくなる)、真っ赤になる)

  ・バイタルサインの変化(心拍数、呼吸数、血圧、SpO2(酸素飽和度))

  ・内臓の反応(嘔吐、吐き気、しゃっくり、いきみ、おなら)

  ・くしゃみ

  ・あくび

  ・すぐにビクッとする

 

  1. 運動系のストレスサイン

  ・全般的な筋緊張低下

    (四肢を他動的に動かすときの抵抗の減少、ぐにゃぐにゃしている)

  ・半狂乱にばたつく動き

  ・指を開いたまま

  ・過伸展(体幹、腕、脚、真っ直ぐに伸びてロックされている)

  ・過屈曲

                              

3.状態(State) のストレスサイン

   ・まとまりのない(diffuse)睡眠状態(顔面痙攣、しかめ面などが多く見られる)

  ・ガラスのような目(”ここから立ち去っていない”ように見える)

  ・視線を回避する(目の前にあるものを見ないように)

  ・じっと見つめる(目を見開いたままの固定した視線)

  ・パニックになった目つき

  ・易刺激性(なだめるのが難しい)

 

4.注意相互作用のストレスサイン

  ・自律神経系、運動系、状態系のシステムのストレスサインを出している

  ・他の感覚入力を統合できない

    (見たり、聞いたり、ミルクを飲んだりが同時にできない)

 

これらのストレス反応を見ると、乳児院で出会う赤ちゃんたちに、しばしば見かける項目があると気づきました。

以下のような項目が思い出されます。

 

   ・呼吸の不安定さ

   ・下肢の筋緊張の低下 

   ・全身がぐにゃぐにゃしている

   ・体幹の過伸展(後弓反張)

   ・睡眠の不安定さ

   ・ガラスのような目

   ・視線の回避

   ・目が見開いたまま

   ・易刺激性

   ・片手、片腕の過屈曲 

 

乳児院に来るまでの体験に加え、乳児院での生活も、ストレスを受けている児がいるものと考えられます。その理由の1つとして、人員配置が十分ではないことを挙げたいと思います。負荷がかかっているシステムの成熟を促すためには、1対1でゆとりを持ってケアできるくらいのゆとりが必要ではないかと考えています。

 

参考:

1)藤本智久「II 疾患別各論 1. 早産・低出生体重児」,159

        大城昌平 儀間裕貴編集 (2018)『子どもの感覚運動機能の発達と支援 発達の科学と理論を支援に活かす』 メジカルビュー社 

 

2) Als,H(1982). Toward a synactive theory of development:Promise for the assessment and support of infant individuality. Infant Mental Health Journal, 3:229-243

 

3)Brazelton,T Nugent,J(2011)  THE NEONATAL BEHAVIORAL ASSESSMENT SCALE Fourth edition  Mac Keith Press 

 

4)Emory School of Medicineのホームページ

Understanding Preterm Infant Behavior in the NICU

https://med.emory.edu/departments/pediatrics/divisions/neonatology/dpc/nicubeh.html

 

 

   

 

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