Alsの共作用理論 その2ーシステムの発達
Alsの共作用理論の続きです。
いつ頃どのシステムがどのように成長するかまとめてみました。
1.妊娠24〜29週 安定化の段階
自律神経系)不安定、呼吸と摂食は自律的でない
運動系)不安定、姿勢のコントロールは乏しい
状態調整系)評価されない
注意相互作用系)外部からの刺激を知覚し反応する。
胎内では、触覚、固有覚、痛覚、聴覚、前庭覚が用いられる。
(出産後は視覚、嗅覚、味覚も用いる)
自己調整系)まだ乏しい
2.妊娠30〜35週 組織化の段階
自律神経系)より安定してくる
呼吸は時々自律的になる
摂食は吸うこと、飲み込むことと呼吸機能の協調ができるようになってくる
運動系)重力に抗するスキルとともに、姿勢のコントロールができ始める
状態調整系)眠っている相と起きている相の交代がみられ始める
動いている時と静かな時の交代がみられ始める
注意相互作用系)集中と警戒のスキルが安定してきている
一度に一つの刺激に対して相互作用が行える
自己調整系)成熟の兆しが見られるが、ファシリテーションが必要
3.妊娠36〜40週 統合の段階
自律神経系)安定、呼吸と摂食が自律的になる
運動系)重力に抗する姿勢コントロールがさらに安定する
状態調整系)睡眠-覚醒、啼泣-安らぎ、休息-動きの交代が組織化されてくる
注意相互作用系)社会的な相互作用が可能になる
自己調整系)能力が高くなる、外部のファシリテーションが必要
参考)Maltese, A., Tripi, G., Gallai, B., Marotta, R., Lavano, S.M., Lavano, F., Romano, P., & D'Oro, L. (2017). THE SYNACTIVE THEORY OF DEVELOPMENT: THE KEYWORD FOR NEURODEVELOPMENTAL DISORDERS. Acta Medica Mediterranea, 1257-1263.
お母さんのお腹の中での生活、イメージがついてきたでしょうか。
早産となり、NICUの保育器の中で成長する赤ちゃんが、順調に発達していけるようにサポートするケアをディベロップメンタルケアと言います。サブシステムの状態を評価し、ストレスがかかっているシステムに必要なケアを行い、安定してきたら、その次の段階のシステムの発達を促すケアで、各地のNICUで取り入れられています。
実は近年、低出生体重で生まれる赤ちゃんの数は増えています。
人口動態統計によると、昨年生まれた日本人の子どもは81万1622人。そのうち、2500グラム未満で生まれた「低出生体重児」は7.6万人(9.4%)で、1975年の5.1%から大きく増えている。その中で1500グラム未満の「極低出生体重児」は0.8%、より未成熟な1000グラム未満の「超低出生体重児」は0.3%の割合だ。小さく生まれるほど、病気や障害のリスクは高くなる。
過酷な環境で成長してきた子たちが、NICUを卒業し、家庭、学校生活を送るようになった時に、その子に合わせた発達支援が充実するようになるといいと思いますし、成人の精神科の方でも、生育歴をきちんと確認すること、受診された方がここまでにどのような人生を送ってこられたか思いを馳せることが重要ではないかと感じています。